食事療法と運動療法

2型糖尿病は発症や進行に生活習慣が大きく関わっています。食事療法や運動療法は血糖値改善に有効なのはもちろん、他の生活習慣病の発症・進行を予防するためにも役立ちます。糖尿病の治療は、薬物療法やインスリン注射を行っている場合でも食事療法や運動療法が不可欠です。
初期であれば、食べる順番に注意して食事をする程度の制限で改善効果が得られることもあります。食事療法や運動療法は継続することが重要です。できるだけストレスのない方法を探しましょう。

食事療法について

糖尿病治療の基本/カギは、第1に食事療法です。2型糖尿病はインスリンの分泌や、作用する力が不足して起こる病気です。インスリンを分泌する力が欧米人に比べて少ない私たち日本(東アジア)人が欧米化した食生活や食事を多く摂り過ぎると、糖分の処理が追いつかなくなり血糖値は上がりっぱなしになってしまいます。
欧米人の糖尿病患者さんの大多数がいわゆる「肥満」ですが、私たち日本人の糖尿病の半数近くが太っていない「非肥満」であることが分かっています。欧米人と比較してちょっとした食べすぎや運動不足が糖尿病の原因になってしまうのです。

バランスの良い食事が摂ることが基本

食事療法の基本的な考え方は、バランスのとれた栄養を1日の必要量のエネルギー(カロリー)以上に摂らないようにすることです。エネルギーの摂りすぎに気を付けて、栄養バランスを整えることにより血糖コントロールが改善し、合併症の予防にもつながります。また食事療法を実践していくと、いわゆる糖尿病予備軍の方々の糖尿病発症予防になりますし、一緒にお住いのご家族様の将来の糖尿病発症予防にもつながることにもなり得ます。
ちなみに糖尿病に良い食品、悪い食品というものはありません。昨今インターネット環境の発達によって食事療法についての様々な情報が溢れていますが、残念ながら間違いも数多く存在します。どんな食品でも過度に摂取してしまうと体に悪いということです。
また糖質制限食(お米や小麦などの炭水化物を極端に摂らないこと)が流行していますが、不健康に痩せてしまったり(筋肉が過度に落ちてしまう)、長期的に続けると糖尿病のコントールが悪化したり、かえって寿命が短くなってしまうといった研究結果も出ています。日々の外来で患者さんと食事についてお話をすると、医師や管理栄養士の先生に食事指導を受け、ご自身なりに色々考えすぎた結果として何を食べたら良いのか分からなくなってしまっている状態の患者さんに多く出会います。
食事療法は毎日の生活で欠かせないものの為不安な方も多いと思います。食事療法について不明な点や疑問点などお気軽にご相談下さい。一人一人の患者さんにあった食事療法について当院では具体的・実践的にアドバイスをさせて頂きます。

運動療法について

当院の運動療法についての方針

運動療法糖尿病患者さんのための運動療法ですが、中等強度運動(最高心拍数の50〜70%)を週3回以上、毎週合計150分以上実施。少なくとも週2~3回はレジスタンス運動を行う。 という推奨ガイドラインは設けられていますが、イメージをするのが難しいと思われますので、具体的な事を記載します。
1日たった20分程度(2000歩)歩くだけで糖尿病のコントロールの指標であるHbA1cが約0.7%も低下するという報告があり、運動不足な人達や座っている時間が長い人達ほど予後が悪くなるという報告もあります。
また最近の報告では40歳ころの体力が低かった集団は、体力が高かった集団と比べて将来高齢者になった時の医療費がより高くなる(低体力な人ほど将来の医療費がかかる)という報告もあります。つまり体を動かすこと自体が血糖値も改善するし、それだけでなく将来の様々な病気のリスクを下げてくれると言えるかもしれません。
「1日1万歩を歩く!!」などの具体的な目標をお持ちいただくのは勿論大切ですが、「座っている時間を減らしましょう。今よりも動きましょう。」というのが当院の運動療法に対する基本的な考えになります。  

運動をすることによる具体的な効果

運動をすること自体がもちろん糖尿病の治療になります。運動はそれ以外にも、

  • 降圧効果(血圧が下がる)
  • 脂質代謝改善(コレステロール値・中性脂肪値の改善)
  • 骨粗しょう症や筋力低下の予防(寝たきりの予防)
  • 免疫力が上がる(様々な病気の予防)
  • 気持ちが晴れやかになる(不眠症やうつ病などの予防)
  • 日々の生活の質の向上

などが、今までに数多く科学的根拠を持って示されており、更には癌や認知症までも予防できるかもしれないと言った驚くべきデータが近年数多く報告されています。米国スポーツ医学会は“Exercise is Medicine®”という言葉を商標登録しています。糖尿病の治療のみならず健康寿命を延ばしてくれる運動を日々の生活にぜひ取り入れていきましょう。

どのような運動をすればいいのか

大きく分けて

  • 「有酸素運動」
  • 「レジスタンス運動」

の2つになります。
有酸素運動とはウォーキング、ジョギングなどの事です。少し息が弾む程度で、無理なく心地よく続けられるのを目標にやりましょう。
レジスタンス運動とはいわゆる筋トレの事になります。
現在日本は超高齢化社会に向かっています。寝たきりや介護予防の観点からも筋力を保つことはとても大切です。糖尿病学会も近年「貯筋」という言葉を使う事があるくらいに筋肉・筋力を保つことが重要だと言うことが注目されています。また「運動」と言うと身構えてしまう患者さんもいると思いますが、日々の家事や通勤で動くことも立派な「運動」になります。
まず有酸素運動から始めることが基本になりますが、今より動く事を目標に、当院で私たちと一緒に日々の生活に運動を取り入れていきましょう。
しかし、運動療法は制限あるいは患者さんによっては中止したほうがよい場合があるため、開始前に問診、身体診察、検査からなるメディカルチェックをして上で患者さん一人一人に具体的な運動法などもアドバイスさせて頂きます。

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