糖尿病検査と糖尿病合併症の検査

糖尿病の検査

糖尿病が疑われる場合に行って確定診断につなげる検査、適切な治療のための検査、さまざまな合併症の状態を調べる検査などを行っています。

糖尿病が疑われる場合の検査

問診

糖尿病は自覚症状が現れにくい病気ですが、問診では症状以外にも既往症や生活習慣、ライフスタイルなど、下記のようなさまざまなことをうかがって診断や治療の参考にしています。

  • 自覚症状の有無とその内容、はじまった時期など
  • 既往症の有無、その内容
  • 服薬している場合は、その内容
  • 体調・体重の変化
  • 糖尿病の血縁者がいるか
  • 家族に糖尿病患者がいるか
  • 喫煙や飲酒の有無、その量や頻度
  • 運動習慣
  • 食習慣や好んで食べる食品
  • ライフスタイル
  • ストレス

検査

尿糖検査

尿に含まれるブドウ糖の量を調べます。ただし、尿にブドウ糖が含まれている場合も、糖尿病ではないケースがあります。また、尿にブドウ糖が出ていなくても進行した糖尿病のこともあります。こうしたことから、尿糖検査はスクリーニングとして行われており、確定診断には血糖測定検査やブドウ糖負荷試験が必要です。

血糖測定検査

血液中のブドウ糖の濃度を調べる検査です。血糖値は食事や運動の影響を受けて大きく上下します。糖尿病は、血糖値が高い状態が続く状態のため、空腹時血糖値・随時血糖値・ブドウ糖負荷試験などを行って確定診断します。

空腹時血糖値

朝食を食べずにご来院いただいて、空腹状態で採血して血糖値を測定します。126mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。糖尿病型と診断された場合、別の日にも再度検査して糖尿病型と診断されたら、糖尿病の確定診断となります。

随時血糖値

食事の時間に関係なく採血して血糖値を測定する検査です。200 mg/dl以上で糖尿病型と診断されます。この場合も別の日に改めて検査を行って糖尿病型と診断されたら、糖尿病の確定診断となります。

ブドウ糖負荷試験

検査を受ける前の10時間以上絶食した状態で採血して血糖値を測定します。次にブドウ糖75gを水に溶かしたものか、デンプン分解産物相当量を飲みます。その30分後、1時間後、2時間後に採血してそれぞれの血糖値を測定します。2時間後の血糖値が200 mg/dl以上の場合、糖尿病型と診断されます。この検査は、「かくれ糖尿病」など早期の糖尿病の確定診断に特に有効性が高いとされています。高血糖の可能性が高い場合には、ブドウ糖の摂取によってさらに高血糖になる可能性があるため注意が必要です。

糖尿病型について

糖尿病型は、高血糖の検査結果が出たという意味です。空腹時血糖値、随時血糖値、ブドウ糖負荷試験のどれか1つの検査で基準値を上回った場合に、糖尿病型と診断されます。別の日に検査を行って再度、糖尿病型と診断されると糖尿病として確定診断となります。または、空腹時血糖値、随時血糖値、ブドウ糖負荷試験のいずれかで糖尿病型と診断され、HbA1c値が6.5%以上の場合も糖尿病の確定診断となります。

HbA1c

採血してヘモグロビンが血液中のブドウ糖(血糖)と結び付いたHbA1c値を測定します。HbA1c値は検査前1~2ヶ月に実測した血糖値の平均と相関することがわかっています。この検査は、糖尿病リスクを知るために健康診断などでも行われています。ただし、糖尿病以外の疾患で高い数値が出ることがあるため、確定診断には血糖値を調べる検査と組み合わせて行う必要があります。なお、糖尿病の治療を受けている場合には、HbA1cの数値で目標値を決め、定期的に検査して治療効果を評価し、適切な治療に役立てます。

糖尿病の合併症検査

糖尿病で高血糖が続くと、血管へのダメージが蓄積して動脈硬化や毛細血管の損傷が起こり、深刻な合併症を起こす可能性があります。糖尿病と診断されたら血糖値のコントロールを続けるだけでなく、状態に合わせて合併症の検査を受ける必要があります。

血管の検査

動脈硬化・血管年齢検査(ABI)

血圧は上腕部で計測しますが、この検査では足関節でも同時に血圧を計測し、足関節の収縮期血圧を上腕部の収縮期血圧で割ったものがABIの数値となります。ABIが1.0~1.3が正常値であり、これ以下の数値になった場合には足の動脈硬化が進んでいると判断されます。数値が低ければ、それだけ足の動脈の血流が悪化しています。足は末梢ですから血流悪化の影響を受けやすく、足の動脈硬化が進むと下肢閉塞性動脈硬化症を発症します。下肢閉塞性動脈硬化症は進行すると足の皮膚の潰瘍から壊死、切断に至る可能性もあります。
この検査では、脈が伝わる速度の測定も行います。脈が伝わる速度は、全身の血管の老化や動脈硬化の指標になることから、血管年齢検査と呼ばれることがあります。

頚動脈超音波(エコー)検査

首の部分にある太い頚動脈の血管壁厚、狭窄やプラークの有無、血流の状態をリアルタイムで確認できる検査です。頚動脈は動脈硬化を起こしやすい場所であり、脳血管障害のリスクを知るために、そして心筋梗塞の危険度推測にも役立ちます。着衣で椅子に座ったまま受けられ、痛みや不快感がなく、胎児の検査にも使われるほど安全性が高いことも大きなメリットです。

腎臓:糖尿病腎症の検査

腎臓:糖尿病腎症の検査糖尿病の三大合併症である糖尿病腎症は、進行すると腎臓が尿を作れなくなって透析や腎臓移植が必要になってしまいます。日本では、透析が必要になる原因疾患として最も多いのが糖尿病腎症とされています。重症化して腎不全を起こすまで自覚症状に乏しいため、定期的に検査を受けて腎臓の状態を把握することが重要です。

糖尿病腎症の病期は、腎症前期の第1期、早期腎症期の第2期、顕性腎症期の第3期、腎不全期の第4期、透析療法期の第5期までに分けられます。蛋白尿陽性になるのは第3期で、むくみが出ることがあります。ただし、第4期の腎不全期になってはじめて貧血・倦怠感・むくみなどの症状に気付くケースもかなりあります。第4期は尿毒症やネフローゼを起こしていて、適切な治療をできるだけ早く受けないと危険な状態です。

尿中微量アルブミン検査

高血糖によって腎臓が損傷すると、血液を濾過して尿を作る際にアルブミンまで尿中に漏れてしまうようになります。そのため、尿中のアルブミンを調べることで腎臓の状態を確認できます。ただし、通常の尿検査では糖尿病腎症がかなり進行した状態でないと異常を認めることができないケースが多いため、糖尿病腎症を早期発見するためには、尿中微量アルブミン検査が必要です。
尿中微量アルブミン検査では、尿中アルブミン濃度だけでなく腎機能を測る指標になる尿中クレアチニン濃度も測定しています。

尿中アルブミン濃度

基準値 30mg/gCr未満 第1期
糖尿病早期腎症 30~299mg/gCr 第2期

第2期の場合は、血糖値や血圧をコントロールすることで第1期の基準値以内に戻すことができます。第3期になると通常の検査でも尿蛋白陽性になり、第1期の基準値以内に戻すことは困難になってしまうため、早期発見と適切なコントロ-ルが重要です。
なお、300mg/gCr以上の場合には糖尿病腎症以外の原因が関わっていないかをしっかり調べる必要があります。

尿蛋白検査

糖尿病腎症第3期になると、通常の尿検査で顕性アルブミン尿陽性になるケースが増えます。正常な尿蛋白は1日40~120㎎程度で、150㎎を超えた場合は異常とされます。

眼底検査

三大合併症の糖尿病網膜症は、失明や視力の深刻な低下につながる可能性がある病気です。見えにくい、視力が落ちたなどの自覚症状が現れるかなり前に、網膜がある眼底には血管の障害が生じています。眼科で受ける眼底検査は、痛みや心身への負担がなく、糖尿病の進行程度を確認できる有効な検査です。深刻な眼の障害を起こさないために、そして糖尿病による毛細血管への障害程度の指標とするために、定期的に眼科を受診して眼底検査を受けるようにしてください。日本の中途失明の原因は、第1位は緑内障、第2位が糖尿病網膜症という状態が長年続いています。糖尿病と診断されたら、見えにくいなどの自覚症状がない段階で眼底検査を定期的に受けることが特に重要です。

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